PICASSOシステムの概要

 

2. 似顔絵生成の原理

PICASSOシステムでは、「中割り法」という線図形の変形を用いて似顔絵生成を行う。図3に示すように、ある2つの対象物(ここでは「リンゴ」と「バナナ」)を点と折れ線で表示する。

リンゴ    バナップル    バナナ    マンガ化

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図3中割り法の原理

対応点間を結んだ線分を、適当な比率で内分した点が描く線図形はその比率に応じて、2つの対象物における双方の特徴をミックスした図形になる。この図3では、内分比率を(1 - t):t、「リンゴ」をS、「バナナ」をPとすると、ミックスした線図形(この場合、バナップルという架空の果物)Q は、次の式(1)によって表される。

Q = t · S + (1 - t) · P

 = P - t (P - S)     0 ≦ t ≦ 1     (1)

逆に、対応点間を結んだ線分を適当な比率で外分した点が描く線図形は、対象物の特徴を誇張した図形になる。外分比率を(1 + b):bとした場合、「バナナ」のマンガ化Q'は式(2)により表される。

Q ' = - b · S + (1 - b) · P

 = P + b · (P - S)     (2)

ここで、bを大きくするに従いQ'は図形Pをよりマンガ的に誇張した図形になる。このbを誇張率といい、このbを大きくするに従って、Q'はよりマンガ的に誇張することができるということになる。

この原理を使って説明に用いた「リンゴ」と、「バナナ」の代わりにそれぞれ入力顔と平均顔を用いて誇張すれば似顔絵が生成できることが期待できる。

PICASSOでは顔パターン平面上のx-y座標値(Xi, Yi) (i =1, 2, 3, … , N)で表現し、これらを直線で結んで線画として顔を生成する。入力顔Pをこの(Xi, Yi)で与え、これに対し特徴のない平均顔Sを用いれば、誇張率bを用いた式(3)により似顔絵Qが生成できる。このように中割り法により似顔絵を生成することができ、誇張率を大きくすればより個人性特徴を誇張し、また誇張率を小さくすればあまりその人の個人性特徴を誇張しない、といった似顔絵生成法となる。

Xi(Q) = Xi(P) + b (Xi(P) - Xi(S) )

Yi(Q) = Yi(P) + b (Yi(P) - Yi(S) )   (3)

i =1, 2, 3, … , N

以上の原理をもとにPICASSOシステムにより生成された似顔絵の作品例を図4に示す。なお、

P:入力顔、S:平均顔、Q:似顔絵、b:誇張率

である。また、この似顔絵の実験に用いた誇張率bは、0.40である。

S : 平均顔

P : 入力顔

Q : 似顔絵

図. 4 似顔絵作品の例