さて、この「ウェディング・ドレスに紅いバラ」にも、魅力的な吸血鬼達が何人も登場します。しかしながら彼らは「オドロオドロ」しくも、また「妖美」でもありません。そこにいたのは、私と同じような(ある意味、私以上に人間くさい)人達でした。ひっそりと暮らしてはいるが決して悲観はしていない、そんな強い人達でした。彼らは、あくまで人間に対する小数派として物語のなかで描かれ、自らの手でいわば「同族」である後天的な吸血鬼を葬っていきます。そうする事が自分達の平和を守ることになるからです。
吸血鬼であるがゆえの悲しみを背負って生きて行かねばならない彼らの、それでいて明るく生きてゆく彼らの姿がいつまでも心に残る、そんな作品でした。