(感想)
私は、高校3年の冬に銀河英雄伝説(以降銀英伝)に出会うまで、ほとんど本なんて読まない人でした。それまで自分から進んで読んだことがあったのは、小学生時代の少年探偵団シリーズぐらいでしょうか。実際、読み始めてから10ページとたたずに銀英伝の虜になってしまった私に大学受験の荒波を渡りきることはなかなかに困難で、やっとのことでここまでたどり着いたというしだいです。
「最悪の民主政治と最高の専制政治ではどちらがよりましなのか」。この疑問に銀英伝を読む前の私ならどう答えていたでしょうか。おそらく、「わからん」と、一言ですませたことでしょう。本当はわからないというよりも、そんな面倒なことは考えたくもなかったでしょう。銀英伝を読み進めるにつれ、いかに自分が政治に対して無関心だったか、歴史に対して無知だったかを随分思い知らされました。ただ、一部の方々が評されるように、そのような問題を提起したいがためだけに田中氏はこの作品を書いたとは思いません。例えば、私はヤンから自分さえも疑ぐってかかることを、ロイエンタールの生き方からは矜持を、シェーンコップやポプランからは不敵さを(^^)、という具合に、それぞれ少しづつではありますが得てきました。このような魅力的なキャラクター達が単に、田中氏個人の主義や思想をすんなりと伝えるために必要な潤滑油だったとは思えないんです。銀英伝は、これらのキャラクターによって、こんな生き方もあるんだよということも教授してくれたのだと、私は常に思っています。そして、その生き方っていうのが、もう、たまらなく素敵なんです。
9月3日 斎田秋水
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