この年の10月、パルス軍はアトロパテネの野で西方のルシタニア王国軍の侵攻を迎え撃とうとしていた。この霧のなかの激戦は、重臣であるカーラーンの裏切りにより、若き王子、アルスラーンに初陣と敗北を同時に経験させることになる。今や、パルス王アンドラゴラスは囚われの身となり、宮殿には狂信的なルシタニア兵があふれている。その中にただひとり、異形のものがいた。心の激しさを覆い隠すかのように銀仮面を身につけたこの男は、これから始まる復讐を思い一人頬をゆるめる。
一方、なんとか追手を逃れたアルスラーンは、元万騎長であるダリューンと共に、王都奪還のために、知者ナルサスのもとを訪れる。この時、アルスラーンの傍らには片方の手で数えられるだけの味方しかおらず、彼らが歩む道が困難であることは誰の目にも明らかであった。
「銀河英雄伝説」「創竜伝」と並ぶ氏の代表作の一つ。田中芳樹ならではの設定の細かさはもちろん、かなり個性的なキャラクターが多く登場するのも大きな魅力です。文庫版であるため、巻末には楽しい後書きも掲載されています。
● 『天馬之夢』(1991年 天野喜孝 角川書店 A4版)
アルスラーン戦記画集。田中芳樹の書き下ろしの詩3編を収録。
● 『アルスラーン戦記1』(1991年11月 中村地里 角川書店 B6版)(初出(『アスカ』 91年増刊号夏の号)